ブルックナー 交響曲8番

ブルックナー

ブルックナー

交響曲8番 ハ短調 WAB.108

1884年に作曲が始められ、1887年に完成。ところが第7番を初演した指揮者に演奏不可能と言われ、全面改定を決意。1890年に改定を終了する。この晩年の改定作業のため、交響曲第9番は未完に終わった。

ブルックナー 交響曲8番

ブルックナーの音楽は、はじめて聞いても、何が何だかまったく分からない。
ベートーヴェンのような人間のドラマはまったくないし、
襲いかかる苦悩もなく、過去の回想シーンもなく、葛藤と勝利もない。
登場人物はまったくなく、あるとすればブルックナーが一人で大自然の中を巡り歩いているだけ。
ところが、ブルックナーが何を言っているのか聞こえてくれば、
これは音楽史の流れから突然変異したかのような天才の偉業、
人類史上最高傑作の規模と感動を持つことが分かる。

第8番は、ブルックナーの完成された最後の交響曲。
例えば第3楽章は、始まるとやすらかな草原のような情景が浮かび上がり、
草の葉が風にゆらいでいる。
最近の演奏で、音色が鮮明だと、草の上の露が反射してきらきら輝いている。

目の前に広がる大自然を仰ぎ敬い、弦のトレモロは、感動に打ち震えている。
ところどころに心を震わせるような細くて冷たい風が吹く。
テノール・テューバの第2主題第2句は、秋のような澄んだ空が高く広がり、
目の前が夕焼けにそまる。

真っ暗な中にさしこむ寂光といい、
心をしめつける寂寥感といい、
大自然への畏敬といい、
もうすべてが感動的!

演奏は、昔ながらの定番のクナッパーツブッシュのミュンヘンフィルもすばらしいし、
新しい録音では、ヴァントや朝比奈隆の最後の録音もすばらしい。

ところが、指揮者によっては、個性が合わないのか、
ブルックナーの本質が分かっていないのか、
人間臭く演奏したり、音のバランスがおかしく、
ブルックナーが崩れてしまって残念。

改訂版では、心をしめつけるようなすばらしいところが削除されているので、
なぜ自らそんなことをできるのか、ブルックナー本人さえも、
この音楽のすばらしさが分かっていたのかどうか謎である。