長南瑞生の部屋

ある愛の詩

1970年、アーサー・ヒラー監督の名作『ある愛の詩』は、
不滅のロマンス映画とし て歴史にその名をとどめています。

大富豪の一人息子で、勉強もスポーツも万能のオリバーは、
ハーバード大学時代、図書 館で知り合った貧しいお菓子屋さんの娘、
ジェニーと恋に落ちます。

あまりの身分の違いに、卒業したら音楽を学びにパリへ行くというジェニーを、
オリバ ーは引き留め、父親の反対を押し切って、卒業と同時に結婚。

仕送りを打ち切られますが、音楽の夢をあきらめたジェニーが
小学校の先生をして学費を稼ぎ、
オリバーはハーバードの法科大学院に進学します。

食うや食わずの毎日で、時には大げんかをして
ジェニーが出ていったこともありますが、最後には戻ってきて
「愛とは決して後悔しないこと」
と夫にほほえみかけます。

二年間の苦学の末、ついにオリバーは三位の優秀な成績で卒業、
ニューヨークの法律事務所に高給で迎えられました。

喜んだ二人は、子供の名前を話し合ったり、
これから始まる新生活を思い描きます。

ところがニューヨークへ来てすぐ、
ジェニーは白血病で、余命幾ばくもないと分かったのです。
オリバーは次々入るやりがいのある仕事を断って、必死に看病しますが、
ジェニーはみるみる弱っていきます。

その年の冬の、ある寒い日、ジェニーが病気だと知り、
オリバーの父親がかけつけた時には、
ジェニーは息を引き取った後でした。

「なぜ言わなかった! 私が力になったのに」
父親の言葉を、うつろな目をしたオリバーがさえぎり、
「......愛とは決して後悔しないこと」
とつぶやくと、一人、ジェニーとの
思い出の場所に行き、じっと座り込みます。

家を捨て、家族を捨て、莫大な財産をも捨てて、
ただ愛のために大変な苦労をしてきたのに、思いがけず、
その愛する妻を失ってしまいました。

今までの苦労は何だったのでしょうか......。